森博嗣「すべてがFになる」
孤島のハイテク研究所で、少女時代から完全に隔離された生活を送る天才工学博士・真賀田四季。彼女の部屋からウエディング・ドレスをまとい両手両足を切断された死体が現れた。偶然、島を訪れていたN大助教授・犀川創平と学生・西之園萌絵が、この不可思議な密室殺人に挑む。ミステリィの世界を変えた記念碑的作品。
出典:すべてがFになる
はじめに
この作品に関してはノイタミナで放送されていたテレビアニメ版を視聴済みだった。といっても放送当時2015年なので多少は記憶が曖昧ではある。
が、とても衝撃を受け大好きな作品だった故に大事な所はほとんど覚えていた。
もちろん当時はただのアニメファン。アニメで知り合った作品はどんなに好きになってもなかなか原作小説や漫画などには手を出さない私。(読み漁ったのは涼宮ハルヒくらいか)
今回この小説を書店で手に取った理由は親友が森博嗣の大ファンであった為一冊読んでみようと思ったから。そしてたまたま知っているタイトルがあった。それがこの本というわけ。
私「あ、これ森博嗣さん原作だったんだ!」
物語の結末を最高の調子で楽しみたい私は基本的に予備知識ゼロの本を選ぶ。
ということで初めて予備知識満載でミステリィを読むことになった。
読み終えた感想

結論…良かった。
シリーズを通して読みたくなった。
気に入った台詞やキーワードに付箋を貼るようにしているのだが、この有様。
主人公の犀川や萌絵、そして真賀田四季の論理的掛け合いがどツボに入る。
主要登場人物
犀川創平
N大学助教授。学会のホープとまで言われ、非常に優秀な研究者。
指向性が卓越していて客観性が抜群。いつもタバコを吸っていて作中で何本吸ったかわからないほど。西瓜とあんこと黄粉がどうしても食べられない。
西之園萌絵
N大学1年性。165*3367=555,555を一瞬で計算できるほどの頭脳がある。
思考が飛躍する特徴がある。(真賀田四季はそれを一番の才能と言う)
とんでもなく裕福な家庭のお嬢様。
虫歯になるからという理由でチョコを噛むという言葉が彼女の辞書には存在しない。
真賀田四季
幼稚園の時に十桁のかけ算を一瞬で答え三乗根の暗算が即座にできた正真正銘の「天才」。14歳の時に両親を殺害した疑いで逮捕されるが心神喪失と判断され無罪。
「人類のうちで最も神に近い」と言われる天才プログラマー。
孤島の研究所で起きた密室殺人
”孤島” ”密室殺人事件” みんな大好きなやつ。
物語の展開としては、
主人公そして本作の探偵役「犀川先生」こと大学助教授の犀川創平と、本作のヒロイン「西之園君」こと大学1年生の西之園萌絵がそれぞれ違った思考パターンを軸に論理展開して事件を解決していく。
事件自体にはとても興味が持てた。
予備知識もあったため伏線やミスリードも確認することができたと思う。
しかし後半はちょっと無駄な殺しもあったかなといった感じ。
犯人の殺しの動機がサイエンスティックな作風っぽくないなと思いつつ殺しの手法やトリックに関してはワクワクして楽しむことができた。難しい言葉が使われている部分に関しては少々解釈が難しかった。
思考過程で魅せる登場人物たち
瀬名秀明が解説ページで以下のように語っている。
これまで多くの小説では、登場人物に深みを持たせるために彼らの行動過程を書き込むという手法が採用されてきた。しかし森の小説では肉体的な行動の代わりに登場人物たちの思考過程を通して彼らが浮かび上がってくる仕掛けになっている。
出典:すべてがFになる 解説ページ
この解説を読んでピンときた。
本編を通して犀川や萌絵は感情的に行動したり証拠を探しにあちこち走り回ったり…といったことはほとんど描かれていない。それでも読者はこの2人が事件にアクティブにグイグイ干渉してしかもそれがすごい魅力的に感じると思う。
それくらい犀川と萌絵の思考過程が織り成す理系的会話が2人のキャラクターを魅力的に表現しているように感じた。
まあでもこの手法の良し悪しは読者によって好き嫌いがハッキリ分かれそうな気もする。
『S&Mシリーズ』
犀川&萌絵シリーズのことらしい。
今回読んだ「すべてがFになる」を第1作として全10作にもなるシリーズ。
今作だと、もちろんこの2人はキャラが立っていたがそれはどちらかというと論理展開や作者の世界観の代弁者的意味合いが強い。続編では読者がグイグイ犀川や萌に感情移入できるよな人間ドラマを読んでみたい。
まとめ
結論、私の総評はとても面白い一冊だった。
予備知識がなければまた違った評価にしていただろうか…?
もし友人に進めるとしたならばミステリや推理小説の趣向性がある人には進めたいと思う。